著者の作品は先日『初体験学習』で体験済みながら、こちらは短編。『初体験学習』が初々しいボーイと娘っ子の初体験物語で、官能小説らしからぬ瑞々しい作風が印象的だったのに比較すると、こちらは短編という制約もあってか、かなりストレートな官能短編でした。
物語は、電車で見かけた痴漢騒ぎの翌日、ボーイは再び痴漢をされていた少女と出会うのだが、その少女は自分に対して奇妙な行動に出て、……という話。短編なので内容を詳らかには出来ないのですが、タイトルにもある「薫り」が本作のキーワード。女性特有のフェロモンの作用によって男たちが、――という趣向から、車内で痴女っぽい行為に及んだ娘っ子とボーイがどのような関係へと流れていくのかというのが見所かと思うのですが、その身体に秘密を持っており、さらには車内での痴女っぽい行為を愉しんでいたのとは裏腹に実は――という少女の背景とそのギャップが面白く、最後はちょっと予想の斜め上を行くハッピーエンドで締めくくられます。ある意味、『初体験学習』が期待された着地点へと落ち着いたのに比較すると、こちらはそうした読者の期待を裏切ってみせる変化球というか。
「花に呼ばれて、彼女は」のようなExtreme風味は薄く、また「白い帯」のような小説としての技巧に唸らされるような作風ではないものの、むしろこの軽妙さを愛でるべき一篇といえるかもしれません。個人的には作者の作品であれば、やはり『初体験学習』の方を先に読まれることをオススメしたいと思います。
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初体験学習 / 橘真児