前作『兄妹奴隷【スレイブ】誕生 暴虐の強制女体化調教』が、男の娘という特殊な嗜好に特化した物語だったゆえか、本作はアイドルの奴隷堕ちという極めてオーソドックスなストーリー展開でキメた一冊でした。柚木ファンとしてはやや物足りなく感じたものの、ヒロインと友人であり敵方ともなる少女との関係の妙や、ワル男側の人脈に見られる反転や揺らぎなど、ここでも人物相関図から官能のドラマをきっちりと立ち上げてみせる柚木節は健在で、特に後半の展開と幕引きはかなりのお気に入りとなりました。
物語は、有名デザイナーだった母を交通事故で亡くしたヒロインが、やむを得ぬ事情で名門校のタレント校へと転入することになるも、薄汚い叔母や大人たちの策略によって奴隷堕ちすることに、――という話。
ヒロインの気丈さと可憐さは、スケベな悪教師を敵方に据えていくつかの逸話で見せてくれるのですが、個人的にはこのヒロインよりも、トップアイドルの座を夢見ながらワル教師に従うままの奴隷となっているサブ・ヒロインの美嘉に惹かれました。お嬢様であるヒロインの美しさと気高さに憧れながら、同時に彼女を自分と同じところに堕してやりたいと暗い情念を燃やす美嘉との対比によってヒロインの美しさがますます際だつという、――『処女調教365日』にも通じる二人の女性を対蹠させた構図の妙は、これまた柚木小説に期待される魅力の一つでもあるわけですが、二人の奇縁は物語の幕引きまで続き、ヒロインの堕落によって二人が運命的な純粋を完成させる幕引きも心地よい。壮絶な暗黒堕ちを開陳して物語が突然の終わりを告げる初期作『美少女メイド 完全調教室』や『改造美少女』、あるいは悪の美学が同時にヒロインの美の完成へと昇華される傑作『聖少女 魔の完全調教』などともまた違った、これまでにないヒロインの扱い方は案外、作者の新境地といえるかもしれません。
奴隷堕ちとはいいながら、肉体改造を強要されるような壮絶な地獄へと堕ちるわけではないので、昔からの柚木ファンからするとやや物足りないと感じられるものの、そんな昔からのファンの期待を感じてか、後半になるとそれらしい煉獄がさらりと描かれるところに要注目。おぞましい情景を眼の前にして、二人の少女が「自分たちもちょっとしたボタンのかけ違いでこうなっていたのかもしれない」と戦慄するシーン――あくまでもう一つのあったかもしれない絶望的なエンディングを読者の想像に委ねたところが心憎い。
というわけで、柚木ワールドにしてはソフト路線ではあったものの、おおむね満足できる出来映えでありました、――が、そろそろ『聖少女 魔の完全調教』や『美処女』のような熱量が半端ない鬼気迫る逸品を読んでみたい気もします。新規顧客の獲得はこのあたりで一段落させて、次回はオールド・ファンに向けた狂気溢れる作品を、と期待して筆を置きたいと思います。