『人妻と少年 魔惑の熟唇』が傑作とは言えないけれども、キワモノ的にはなかなか味のある一冊だったので、同じ作者のものを漁ってみることにしました。現在のところ、マドンナメイトで読むことができるのは、今回取り上げる『女医と少年 H病院童貞科』と『恥辱狂姦 義母の黒下着』の二冊だけらしく、とりあえず両方ともReader™ Storeでゲットした次第です。
と言うわけで、まずは『女医と少年 H病院童貞科』なんですが、内容としては年上のインテリ女が童貞ボーイをいただくという趣向は『人妻と少年 魔惑の熟唇』とほぼ同じ。さらに童貞ボーイに何だがよく分からないけれども一目惚れしてしまって、……という必然をスッ飛ばした端緒も同じとあれば、ちょっと不安な気持ちになってくるのですが、しかしながら本作ではそのあとの展開と構成がなかなかにうまく、堪能しました。
眼科医であるヒロインの元にやってきた童貞ボーイへ一目惚れして、その場で診察をスッ飛ばしてプレイへとなだれ込むという性急な展開が、『人妻と少年 魔惑の熟唇』ではまず先輩のレズプレイを挿んで少年との行為に及んだ点とやや異なります。もっともこのあとしっかりとレズプレイが用意されているのですが、それについて後述します。
まず眼科医というヒロインの特性をフル活用して、冒頭に「目玉舐め」という特殊プレイをタップリと添えた変態嗜好が素晴らしい。これが彼女や少年の心理描写もタップリと添えて非常に丁寧に描かれているところも二重丸。このシーンは本作での白眉といえるのではないでしょうか。個人的にはこの目玉舐め、ほかの官能小説でも見た記憶がないゆえ、かなり印象に残りました。
そして少年との行為に及んだあと、親友の歯科医にその話をするや彼女とのレズ・プレイに及ぶという、『人妻と少年 魔惑の熟唇』とはレズと童貞喰いの順番が逆ではありますが、本作ではレズ・プレイをここに挿んだ必然が感じられます。と言うのも、このあとある理由から件の少年が女装姿で女医のもとを訪れることになるのですが、この女装姿にコーフンしたヒロインが少年を男の娘にしての官能シーンがこれまたかなり熱のこもった筆致で描かれています。親友とのレズ・プレイが転じて女装ボーイとの変態行為に及ぶという構成もスムーズに感じられ、レズ・プレイを冒頭ではなく、ここに配した必然性が感じられます。そして最後には少年の弟も巻き込んで四人での大団円を迎えるという、『人妻と少年 魔惑の熟唇』でも見られた幕引きで魅せてくれるのですが、この作者の場合、「レズ」「童貞」「複数プレイ」といった骨法が定番となっているらしく、これらのモチーフを組み合わせて一つの物語へと仕上げているのではないかナ、と感じた次第です。
本作では珍妙オノマトペや絶叫台詞の奇天烈さはやや影を潜め、官能シーンの構成に必然を添える一方、女医と親友とのアッケラカンとした関係や、童貞喰いのあとに感じられるどこかほのぼのとした少年とのやりとりなど、ポップな作風が際だつ一冊へと仕上がっています。キワモノ好きからすれば『人妻と少年 魔惑の熟唇』を推しますが、定石に従ったノーマルな官能小説を所望の方であれば、最近のトレンドともいえる男の娘の趣向も添えて「誘惑もの」の魅力を前面に押し出した本作の方が愉しめるのではないでしょうか。
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