Kindle Unlimitedの品揃えが変わっていたので、もしかしたら色々と読めなくなるかもしれないカモということで、 足利武志とともにお気に入りとなった作者の作品を取り急ぎまとめ読みしておこうと考え、本作を。
結論から言ってしまうと、痴漢に女子高生と倉田ワールドでは定番の素材ゆえ、自分が読んだ過去作を手に取ったことのある読者であれば、本作もまた安心して手に取ることができるとオススメできる一冊でありました。物語のあらすじは、またまた例によって、満員電車の中で痴漢に遭っている女子高生を見つけてしまったリーマン男が、痴漢の魅力に覚醒、納品をしている客先の女子校で、痴漢被害者の女子高生と偶然再会してしまった彼は、彼女に狙いを定めて、――という話。
作者らしい、陵辱とも違うソフト調教路線で、初な女子高生にだんだんと性の快楽を教え込んでいくという展開ゆえ、正直作者の作品をすでに何作か読んでいる読者にとって新味はないのですが、それは逆にいえばどの作品から読んでも安心できる、ということでもあります。ちょっと面白いナ、と思ったのは、官能小説においてはヒロインの魅力が最重要視されるはずが、倉田ワールドではどうにもヒロインの印象が薄く、どの作品でも同じに見えてしまうところでしょうか。あくまで個人的な感想ではありますが、むしろ性を知らない女子高生を次々と絡め取っていく主人公に感情移入をして、物語にのめり込んでしまうという、――なんというか、まさに男の妄想をしっかりと体現した趣向こそが作者の真骨頂なのでしょう。決して無理強いすることなく、ヒロインを堕としていく主人公の心情は以下の独白に明らかで、
オレの望みは強姦ではない。悲鳴を張りあげ、涙をこぼす女を力づくて犯してやりたいのではない。まだ男に揉みほぐされたことのない張りのある乳房、吸われたことのない乳首、弄ばれたことのない蜜壷、その無垢な少女の身体に性の歓びを教えたいのだ。そして、自分が望む女として、一から仕こみたいのだ。レイプではない。恥ずかしさで頬を染め、それでも女として目覚めていく少女、青虫から華麗な蝶へと生まれ変わる身体を見つめていたいのだ。
実際に主人公のやり口はソフト路線ながら、言葉巧みにヒロインを逆らえない方向へと誘導していく言葉のテクニックは極上の心理術でもあり、彼とヒロイン二人だけの駆け引きを眺めているだけでゾクゾクしてしまいます。たとえばいきりたった怒張を見せつけ、「男は単純な生き物なんだ。出しちゃえば、欲望はなくなる」と、倉田小説のどっかで読んだことのある台詞によってヒロインに妥協するきっかけを与え、そこから絡め取っていくえげつなさ。また花火大会へ誘い出してまたまた彼女を逆らえない方向へと誘導してエロいことをカマしていく外連など、陵辱路線から何歩も引いた主人公のソフトな落とし方が、逆に不思議なリアル感を生みだしているところが秀逸です。
処女喪失においてヒロインに「私のことが好き?」という言葉を呟かせ、性の中に愛を込めて官能シーンを盛り上げていく趣向も期待通りで、まさに倉田ワールドにはハズレなしという法則をまたもや見せつけてくれた本作は、作者の作品を一冊手に取って気に入ったという方であればまずは満足できる逸品といえるのではないでしょうか。オススメです。