処女作『奴隷姉弟 [女体化]マゾ調教』をひっさげ颯爽と官能小説シーンに現れた(ということでいいんですよね?)作者の第二作。当たり前といえば当たり前ですが、本作もまたヒット作たる前作の趣向をシッカリとトレースした女体化を大々的にフィーチャーした逸品で、官能小説の存在意義たる官能描写は前作をさらに上回るネチッこさで堪能しました。
昨日アマゾンで見たときには本作、ベストセラー第一位と謳われてい、かなり売れていることには間違いありません。女体化って官能小説の中ではどっちかっていうとマイナーなんじゃないかなァ、……と自分などは感じていたのですが、どうやら時代は大きく変化しているようです(爆)。
あらすじは、元はお嬢様が通う女子校でいまは男子も採用している学園に、ずば抜けて頭がいいわけでもないごくごく普通の、――しかし抜群に可愛くて女の子にも間違えられることしきりという主人公が見事試験にパスして入学することに。しかしそこはタイトルにもある鬼畜生徒会が統べる恐ろしき学園だった、――という話。ワル親父の借金のカタに売られた主人公が女体化調教を受け入れるという、柚木ワールドを彷彿とさせる導入部を採用していた前作に比較すると、本作の出だしはまだ序の口。しかし主人公のボーイが生徒会の策略によって無理矢理演劇部へと入部させられるところから、いきなり調教シーンの連打が繰り出されるスピーディーな展開が素晴らしい。
場面展開を少なめにして、とにかく責め側女性の交替やボーイの攻撃部位を変化させることによって、ワンシーンに様々な官能描写を盛り込んだ本作の構成は読者をまったく飽きさせません。一度の官能描写を短めにして場面展開を繰り返すと、盛り上がっていた読者の気持ちもアソコも萎えてしまうものですが、本作ではそんな不満はまったくなく、特に中盤、ボーイが生徒会の娘っ子たちに取り囲まれて、女奴隷の導きによって童貞を辛くも喪失し、そこから畳みかけるように肛虐シーンへと移っていく展開の華やかさは本作における官能シーンの白眉でしょう。
基本的には生徒会の美女たちがボーイを次々と責めていくというのが、本作における官能シーンの骨法となっているのですが、本作の大きなテーマは女体化にあるものの、こうしたハーレム状態を調教の中核に据えることによって、女体化へといたるボーイの葛藤とともに、男性としての愉楽も合わせて描き出そうという作者の心意気がまた秀逸。女体化調教を受けるなかでボーイが女々しい喘ぎ声をあげながら内心の言葉をトレースしてみせる心理描写はちょっと平凡に感じられて物足りないものの、射精以上の快楽を美女たちに植えつけられていく調教シーンは、女体化というやや特殊な性向を持つ持たないにかかわらず、ノーマルな(?)マゾ男子にも十分にアピールできる逸品へと仕上がっています。
とにかくボーイの調教シーンの連打に次ぐ連打でスピーディーに展開されていく構成であるため、登場人物たちの相関を官能に結びつける趣向には乏しく、このあたりが柚木ワールドとの大きな違いでしょうか。そうした柚木小説に見られる深みやコクが希薄とはいえ、ストレートに官能へと大きく振った作風は、”実用性”という点では二重丸、三重丸を与えたくなる素晴らしさゆえ、とにかく「使える」官能小説が今すぐ欲しいッ!という生臭男子にはまず文句なしにオススメできる一冊といえるのではないでしょうか。
なお、蛇足ではありますが、副会長が美しき生徒会長に寄せる秘めやかな恋慕の情や、生徒会長の父親の裏コネクションなど、後半部には気になる舞台背景を明かしているゆえ、できれば続編でそのあたりを読んでみたいなァ、……と感じた次第です。早く新作が読みたいッ!
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