傑作にして完全に好み(爆)。これはまさに「催眠マニア必読!」と特筆大書されるべき逸品で堪能しました。
あらすじは、妹の様子がおかしいと母から相談を受けた姉が、妹の会社に潜入するもそこで捕ってしまう。「ウチの研修を耐え抜けば妹も貴女も解放してやろう」と会社から持ちかけられた彼女は、その怪しい研修を受けることになるのだが……という話。
ミイラ取りがミイラになってというのは、女捜査官ものの定石ではありますが、そうした官能小説の骨法をしっかりとトレースしながらも本作が優れているのは、怪しい会社の正体を社長も含めた件の社員からの視点によって明かしつつ、ヒロインを陥れる秘策を盛り込んで次第に彼女を淫婦へと変えていくその構成の巧みさでしょう。
あまり頭の良くなさそうな社長に、抜群のマゾ鑑識眼を持った側近の男、そしてマッドサイエンティストめく開発部のアナルマニアなど、中小企業のいかにもな雰囲気にそうした味のある登場人物を配することで物語に軽妙な趣を添えているところも秀逸です。ヒロインの油断を誘い、そこから悟られることなく彼女を次第にマゾへと陥れていく手法は、確かに催眠というよりはタイトルにもあるとおりの洗脳といった方が相応しい見せ方ではありますが、自身の意志に反して体が反応してしまうヒロインの戸惑いを繊細に描きつつ、それをワル会社の側の視点も織り交ぜて描いた構成が絶妙な効果をあげています。
マッドサイエンティストのアナルマニア男が開発した奇妙なブツを試されて、ヒロインが乱れに乱れるシーンが繰り返されるのですが、このマシーンの動作説明が読者に開示されることで、彼女の官能がよりいっそう際だつ趣向は後半へ進むにつれてますますエスカレート。簡単に勝負が決すると思っていたヒロインがついには衆人環視で浣腸をされるまで堕ちていく展開には、上にも述べたような必然があり、官能小説ならではのリアリズムに溢れています。
最後の最期はお決まりの連続貫通式でフィニッシュを迎えるものの、ここにいたるまでの突飛な研修内容には作者ならではの奇抜なアイディアが盛り込まれてい、むしろ通常の挿入行為が物足りなく感じられるくらい。この幕引きが明らかなトーンダウンに見えてしまうところが惜しいとはいえ、ここまでの奇想で魅せてくれれば言うことなし。スピーディーな文体と簡潔な情景描写によって軽妙に進められる構成と、ヒロインの内心を繊細に描き出す文章の妙。さらには安易な挿入行為を極力配してアイディア勝負でヒロインの官能シーンを描き出すエンタメ性など、あらゆる面で自分好みの一冊でした。冒頭に述べた通り洗脳ものではありますが、催眠マニアであれば、ヒロインの内心描写とその官能シーンに必ずや満足いただけること間違いナシという傑作でしょう。超オススメ。