Reader™ Storeで「マドンナメイト」をキーワードに検索し、その結果を”出版日が新しい順”でソートすると、作者の名前の作品がずらりと並んで出てくるので、それでは、――ということで購入した本作、正直ロリ系というだけで敬遠してしまうのですが、これは思わぬ掘り出し物でありました。確かに登場人物は小学生で、”そういう趣味”の方々の”実用性”を考慮した作風ではあるものの、そうした趣味を持たない人でも十二分に愉しめるかと思います。むしろ、登場人物がロリであることが、自分の求める官能小説の様式に対するエクスキューズになっているところが素晴らしいと感じた次第です(この点については後述します)。
物語はメリケンに滞在していたこともあり、英語も堪能というデイトレーダーのボーイが、近所で交通安全のボランティアを始めたのをきっかけに、小学生の娘っ子二人と知り合いになって、――という話。まずこの主人公の造詣が秀逸で、官能小説におけるヒロインが小学生というだけで、昨今は色々と風当たりも厳しくヘタをするとそれだけで非難の対象になってしまうのではと推察されるものの、その点、主人公の男性をネ陰湿なネクラ男ではなく、むしろ社会的には成功しているエリートとしたことでそのあたりの批判を巧みに回避しているところがイイ。こうした主人公の造詣は、大石圭の作品にも通じてかなり好み。実際、この主人公は格別、幼児性愛嗜好者というふうには描かれておらず、小学生ヒロインの二人も性に対して積極的でありつつ恥じらいもある、イマドキの(?)娘っ子に描かれています。主人公の社会的立場とその性格造詣からネクラな感じはいっさいなく、物語の展開もひたすら明るい。むしろ官能描写がなければ普通の”禁じられた”恋物語として映画化も可能なんじゃないか、……とさえ感じました。本作に比較すれば、川端康成の短編なんかの方がよっぽど問題アリなんじゃないかと感じてしまったのはナイショです(爆)。
さて、ヒロインは性に興味津々の小学生ということで、当たり前ではありますがそのセンについてはまったくの未経験。さらに主人公自身も格別昔昔からその趣味があったというふうには感じられず、ボランティアを始めたことをきっかけに出会ってしまった二人の小学生にそうした趣味嗜好に開花させられてしまった、――という印象で、その点からも、本作で描かれているのは悲壮な幼児性愛異常者の物語ではなく、(ヒロインの年齢を除けば)ごくごくノーマルな恋愛物語であります。そして本作が官能小説として素晴らしいのは、ヒロインが小学生であるがゆえに、すぐさま本番行為に及ぶことなく、まず性の目覚めからその快楽を少しずつ開花せんと主人公のボーイが懇切丁寧に導いていく展開でしょう。上にも述べたとおり、主人公とて小学生との恋愛が今回が初めてであるわけですから、そこに男女双方の初々しさと躊躇いが添えられ、官能シーンはじっくりと、そして丁寧に描かれていきます。
ヒロインが中高生であれば、そこには背徳も何もなく、本作のように本番行為以前のやりとりを丁寧に描いていけば、それはしらじらしいものに見えてしまうはずで、官能小説としてのみならず、通俗小説としても、ましてや文学としても今では成立しえないでしょう。そうしてみると、本作では、ヒロインが小学生であるゆえ、この隙間なく丁寧に描かれた官能描写の艶が際だっているといえるのではないか――。
官能小説の宿命として、そのきわどさは一編の物語の中でもエスカレートしていくものですが、本作もまたその例に漏れず、後半は小学生でこれは、……というような展開も見せるのですが、それでも悲壮さは感じられず、性に目覚めたヒロインが小学生だからこそ、積極的にその好奇心からそうしたアブノーマルな行為に参加していく様が描かれているところも秀逸です。ロリ系でありながら、本作に描かれる官能は、あくまで恋愛感情にくわえて、被虐嗜虐とはほど遠い、かなりノーマルに近い性愛がその基盤にあり、そして男性の行為も明るいフェチに傾倒したものであるがゆえ、繰り返しますが、ロリ系に危惧される悲惨さ、悲壮さは微塵もありません。むしろヒロインの可愛さとそれにやや戸惑いながらも自らのフェティシュな嗜好を満たしていこうとする主人公との絆には清々しささえ感じられます。個人的にはロリ系を所望する方々よりも、男性の側からフェチを描いた秀作として、ソッチの趣味の方々に強くオススメしたい逸品といえるのではないでしょうか。やや唐突な幕引きには少しばかり戸惑ってしまいましたが、小悪魔というよりはひたすらピュアで好奇心旺盛なヒロイン二人の造詣から続編があってもいいんじゃないかしら、と感じた次第です。