メインマシンであるデスクトップが壊れてしまい、しばらく更新を休んでおりました。ようやく新しいマシンが本稼働と相成ったので、こちらのブログも再開したいと思います。
さてアマゾンでは散々の評価を受けてしまっている本作、実際に読んでみると、確かに目次では長編作品の体裁を装ってはいるものの、実際は短編集であるという、……まあ、そのヘンは猛省の余地アリとはいえ、作品の質は上々で個人的には大満足。いつもの足利ワールドらしいスピーディーな展開は短編でもまた健在であり、堪能しました。
あらすじはというと、――一応、第一章「失踪 狙われた修学旅行」から第七章「最終章 そしてみんな牝になった」までの七章構成の長編小説のように見えながら、上にも述べた通り、実際は短編集。第一章「狙われた修学旅行」、第二章「処女強奪 クラスメイトの前で」で一篇、続く第三章「囚われ 初めて体験するアクメ」、第四章「壊れる 悪夢の二穴同時責め」で一篇、第五章「輪姦の宴 朝から夜まで犯されて」で一篇、第六章「絶頂 理性と矜恃を裏切る女体」、第七章「最終章 そしてみんな牝になった」で一篇と、計四篇を収録した短編集となっています。
第一章「狙われた修学旅行」から始まる一篇は、修学旅行中のバスがハイジャックされるという物語で、バレー部の副キャプテンのスポーツ少女や、ヤリマンお嬢様などが次々と犯人の餌食になっていくという話。それぞれの女性の綽名がアッキーナやミキティなどというあたりが時代を感じさせるのですが(爆)、ワルの手によって公開陵辱されながらしきりにイカされまいと耐えに耐える友人を励ますべく、居合わせたクラスメートたちが「明奈、耐え抜いて!」「変態なんかに負けたら承知しないんだから!」「ガンバ!」とさかんに声援を送る様子はまさに異常。次は自分が、……という緊張感が微塵も感じられず、完全にコメディと化している情景の中、クラスの人気者だった女性がワルによって痴態を晒されていくにつれ、声援が侮蔑へと変わっていく心情の変化など、見所の多い一篇に仕上がっています。ちょっと気になったのが、ラストで事件現場に駆けつけた「美人捜査官」の存在でありまして、これってもしかして『肛虐タクシー』に出てきたあの人じゃないノ? ……などと妄想を膨らませてニンマリしてしまいました。
第三章「囚われ 初めて体験するアクメ」からの一篇は、会社の慰安旅行で「ドキドキワクワクの寒流ツアー」に参加した女性が、韓流スターにチラッと見初められたばかりに悪辣なマダムの餌食にされてしまう、――という話。ちなみに本作のタイトルは『姦禁バス』ですが、運転手が積極的に陵辱行為へ荷担するのは最初と最後のやつだけで、ほかはアンマリ関係ないような、……というのはご愛嬌(爆)。運転手のモノローグをチラッと交えて、人妻の被虐感を掘り起こしていくネチッこい責めが素晴らしい。やはり女が責めに絡むとかなり陰湿、陰険なものになるという官能小説の好例を見事に体現した一篇で、最後にヒロインが落花無残の中、
「流し目の貴公子、パク・ヨンサムが薔薇の花を口に挟んで魅惑げに微笑している」
情景を幻視するシーンがイカしてます(爆)。
第五章「輪姦の宴 朝から夜まで犯されて」は、収録作の中では一番短い一篇ながら、これまた会社の社内旅行でヒドい目に遭わされるマドンナがヒロイン。中小企業の社員旅行という、いかにも昭和昭和した情景を活写する作者のセンスがまず二重丸で、ゲス上司がゴタクを並べてヒロインを持ち上げ「皆の衆、さあ、乾杯だ!」と声をあげたかと思えば、モジモジしているヒロインに「我々、上層部とのノミニケーションの方が何倍も有効だ。さあ、もう一杯!」と酒をすすめて泥酔させるという悪辣な手法がこれまた官能小説の定石をシッカリとトレースしていて好感度大。社内恋愛中のカレシに裏切られて哀れ生け贄とされてしまうヒロインに悲壮感は薄く、むしろ昇進をちらつかせながら部下に憧れの女を差し出させ、彼女を陵辱しようと必死なワル上司の振る舞いの滑稽さが際だってい、
この夜に備え、岩熊は潮吹きの腕を磨いていた。AV男優の著作を読み耽り、ダウンロードした動画を見学し、風俗嬢で実地体験を積んだ。失敗などするはずがなかった。
こうして最後は部下も交えてのプレイへとなだれ込み、短編の宿命、尻切れトンボでジ・エンド。ヒロインのその後など背景の膨らませ方に関しては物足りないものの、悲壮よりも笑いへと振り切った作風がツボにハマる一篇でした。
第七章「最終章 そしてみんな牝になった」から始まる一篇は、旦那との夜の営みに潜在的な不満を抱いていた人妻が、ヒョンなことで知り合った若いカメラマンにほだされて痴態を撮られてしまうと、今度はそれを脅しの道具に使われ、――という話。公営バスの中が陵辱の舞台というところが、本作のタイトル『姦禁バス』と精妙なマッチングを見せている本編ですが、若燕にイレこんで痴態を晒した過去の回想と、ワルな少年たちがバスの中で陵辱行為に耽るシーンとが、最後の最期、運転手の正体を明かすことによって見事な重なりを見せる構成の妙が秀逸です。
確かに長編の体裁でありなから実際はフツーの短編集で、長編ならではのタップリな陵辱シーンを堪能できないという点ではブーブー不満を垂れてしまうのも納得ながら、作品自体の質感は期待通りゆえ、作者の長編を愉しめた方であれば、まずは短編集であることを承知の上で手に取ることを強くオススメいたします。これは読まないとソンでしょう。
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肛虐タクシー / 足利 武志