以前に感想を挙げた『闇への供物1』の続きです。み台さまこと和香への責めが素晴らしかった第一巻に続く本巻では、後半に大展開される女教師・源葉子のシーンが一番の見所でしょうか。緊縛、浣腸と官能小説では定番の責めのフルコースが展開されるのはもちろん期待通りながら、やはり個人的には、そうした官能描写に最大限の効果をもたせるべく、登場人物たちの人間関係をどのように配置し、それをどう責めの構図に活かしているかに興味がいってしまうわけですが、この第二巻では中盤、ワルの手先となった知英が同級生の圭子を堕とすという展開を用意して、これを後半の見せ場である葉子への責めへと繋げていく構成が秀逸です。
知英は家出少女という背景があるので、運悪くワルたちの手に落ちようともアンマリ同情はできないのですが(爆)、圭子はこの知英と親友だったばかりにワルの手に堕ちてしまうという完全な巻き込まれ型。み台さまのところで働いていた寺男の息子である浩治がワルの先兵となって、圭子を罠に嵌めると、彼女と知英の二人を競わせるようにして調教を進めていく――。この、女一人ではなく、二人一緒にという趣向は、物語が進み、多くの美しき女たちがワルの罠に落ちてしまった今だからこそ可能なことで、この第二巻では、母娘の知英と由布子、親友の知英と圭子、さらに後半には葉子を加えの三人責めといった大きな見せ場が用意されています。
こうして本巻の流れを俯瞰してみると、やはり知英と浩治の二人が今後の展開のキモかな、――という気がしてきました。知英は調教される側でありながら、浩治の手先となってズベ公ッぽい役柄もこなしながら親友の圭子を陥れたり、自分たちの教師である葉子に対する責めにも加わるといった、責める側と責められる側を行き来する二面性を担っています。一方の浩治は、完全にワルの立場でありながらも、かつてみ台さまのところへ住み込みをしていた当時から、み台さまの娘である幼馴染みの薫にそれとない思慕を抱いている。ワルでありながら薫に対する思いは純粋であるというこの”揺らぎ”が物語の展開にどう作用していくのか――。薫が自分たちの先輩と婚約したと耳にしたときの、浩治の複雑な気持ちが物語の中でさらりと描かれているのですが、この惑いと期待が交錯して今後面白いシーンが見られるのではという気がしています。
個人的にやや物足りなく感じるのは、たとえば『花と蛇』における文夫のような、ワルたちの手に落ちる少年がいないことでしょうか。『花と蛇』に登場する文夫の存在は、多彩な官能描写を物語に沿える役割を担っているように感じられます。囚われの身となった恋人の美津子とともに二人で責めを甘受するという展開のほか、ヒロイン・静子夫人との交わり(個人的には『花と蛇』中でかなり好きなシーン)など、柔な男一人が責められる側に加わるだけで、官能の構図のバリエーションが増えていくものですが、本作において今のところそうした役を担えそうな少年の登場はナシ。果たしてこのあたりが今後どうなっていくのか気になるところではあります。