「力ずくの和姦」というサブタイトルに「ちょっと、日本語としておかしくないかい?」と何かクるものを感じて(爆)手に取ってみました。力ずくといっても陵辱ではないし、かといって和姦というほど生やさしいものではないとはいえ、このあたりの巧妙なさじ加減は倉田稼頭鬼の作品群にも通じる風格で、なかなか堪能しました。
物語は、お隣に引っ越してきた人妻と娘二人。二人の娘のうち、アクティブな妹の方がなついてきたのを幸い、さっそくモノにすると、今度は不感症診断を装って姉を凋落し、最後にその毒牙を人妻へと向けることになるのだが、――という話。
積極的に主人公を誘惑してくる妹と、父母の夫婦中がうまくいっていないのが原因で男嫌いになってしまった姉との対比が物語の中盤を展開させる伏線となっているのが秀逸で、アクティブな妹の買い物に同道してエッチなことを仕掛けるあたりはまあまあ、ごくごくフツーの展開ながら、個人的には奥手でツンツンした姉へ不感症診断を装って見事、彼女を堕としてしまう中盤の趣向が面白いと感じました。不感症かどうか確かめてみよう、といって見事ラブホテルへと連れだして、――ってこのあたりの展開がかなり強引過ぎるのですが(爆)、妹をものにした主人公が自信満々に奥手の姉へとアプローチを仕掛ける展開はグイグイと読まされてしまい、不思議とそのあたりの無理筋な流れも気になりません。
奥手でありながら性にはタップリと関心があった姉は主人公の虜となってしまい、次には二人の痴態を盗撮した映像をもとに今度はその毒牙を母親へと向けていくのですが、これだけは最初のとっかかりが脅迫めいたものとなっているので、「力ずく」といってもいいでしょうか。とはいえ、力ずくといっても無理矢理に押し倒してというような暴力行為はいっさい行わず、少しずつ少しずつ相手の油断につけ込んでじりじりと追い込んでいくさまは、マンマ倉田稼頭鬼。おそらくこのあたりのソフトさがイマドキの官能小説では受けが良いのかも知れません。
最後は姉妹との関係をブチまけてハーレム状態へと突入するという予定調和に終わるものの、隣の奥さんだけじゃなくてその娘たちまで一緒に親子丼という「男の夢」を見事に体現した物語は、まさに男のファンタジー。リアリズムに根ざしながらも限りなく日常のファンタジーへ寄り添う一冊ゆえ、誘惑系から今少しステップアップしてポシティブな自分になりたい、なんていう初な官能小説読者にさりげなくオススメしたいと思います。