タイトルの「魔少年」の言葉に惹かれて購入。ここ最近はもっぱらKindle Unlimitedで見つけた黒本ばかりを取り上げていましたが、『ふたご巨乳ナース 僕と義母と叔母と』に続くちょっと久しぶりのマドンナメイトです。もっともあちらはそこそこ新しい一冊でしたが、こちらはというとその装幀から察するにヴィンテージもののような……。というわけでアマゾンで調べてみたら1999年のリリースでした。
長編と思っていたのですが実際は短編集で、「魔少年」が登場しない作品もあったりとタイトルに偽りアリなところがあるものの、良い意味でも悪い意味でも愉しめました。このあたりは後述します。収録作は、未亡人がただひたすら習字少年から和気藹々と肛虐を受けまくる異色の一編「熱尻の肛虐刑」、小学校の教え子だった青年のトラウマを癒やすべく青年のいうとおり肛虐に淫する変態女の物語「暗紫色の陰花」、お隣さんだった青年との再会でひたすら被虐の悦びに悶える女の有り様を活写した「媚肛めざめる頃」、パチ屋で知り合った未亡人の導きでサディストへと目覚めた男と女の痴態「白き美尻の調教」の全四編。
正直、小説としてはその構成といいどうもぎこちないというか何というか、……個人的な印象はマニア素人の投稿っぽくも感じられ、その肛虐に淫する熱量が半端ないところは最高に評価できるものの、官能小説としては……という感じでありました。しかしながら責めと遊びの変態ぶりは二重丸どころか花丸をあげたいほどのアレッぷりで、ある意味マドンナメイトには戸川昌子のような変態を期待していた自分は、思わぬめっけものにニンマリしてしまったということも正直に告白しておくべきでしょう。
冒頭を飾る「熱尻の肛虐刑」は、本作のタイトルにある「未亡人と魔少年 肛虐地獄」そのままの内容で、習字教室の教え子である小学生を誘惑した未亡人がただひたすらボーイ尻を責められるという話。肛虐の地獄といっても、未亡人とボーイの二人がともに嬉々としてSMプレイに興じているという物語ゆえ、地獄とよりは桃源郷というのがふさわしく、習字に用いる道具を積極的に肛虐に応用した趣向が延々と綴られていきます。この作品も含めて、登場人物たちの背景とかそんな細かいことはどうでもいいんだよッ! とにかくこっちは肛虐プレイを書きたいんダイッ! という作者の妄執と熱気がビンビンに伝わってくる昭和の文体が素晴らしい。昭和のエロ劇画を彷彿とさせる未亡人の嬌声こそは、本作においてももっと刮目すべき魅力のひとつでありまして、この辺りをざーっと引用しておくと、
「ギエーッ」「アムムッ……ヒーッ……入れないでー」「アウッ……ダ、ダメ……ダメなのよォーン」「イヤッ……上手……ヒーィーン」「ウヒャヒャッ、フフッ、ヒャッヒャッ」「ウヒーッ……イヤッ、ヒーッ」「ヒィッ……くすぐったーい、堪忍」ムヒッ、ヒイッ、き……」「イヤン……どれかに決めて」「ハイッ……ムグッ」「ウヒィッ……ヒィッ……」「アムッ……ヒーッ……速いっ」「アッ……ヒャッ……またっ」「ダメヨッ、ダメッ……入れたら……アーン……」「ダメですったら……キイッ……やっぱり……アーッ……来てしまうーっ」「ンガッ……痛い……そんなはずは……」「イヤヨォン、イヤッ、してったーい」「ウヒャア、何をなさいます」「ウギャッ……すぐにっ、打たないで」
アムムッと喉を詰まらせ、ヒーィーンと馬のようにいななき、ダメヨッ、ダメダメっと白塗り女漫才師のごとく甘えてみせたかと思えば、今度はウヒャアとネット民のごとく驚いてみせたりと、とにかくカタカナを駆使した懐かしの劇画チックな女の台詞がこの一冊にはテンコモリ。さらには「ウンチングスタイル」や「スイッチポン」などといったこれまた昭和昭和した男側の台詞にも事欠かず、ページをめくりながらこうした昭和用語を拾い読みしているだけでも飽きることはありません。
もちろん変態プレイもミッシリむっちりと詰まってい、「熱尻の肛虐刑」における習字プレイはもちろん、個人的には「白き美尻の調教」におけるパチンコプレイが高得点。女体をパチンコに見立てて、銀玉をあそこに仕込みつつ、チューリップを咲かせたり、――とこのあたりは自主規制で詳しくは述べませんが、出逢いがパチ屋というあたりからもなんだか男も女もおしなべて昭和の平民というあたりが、貴婦人を奴隷に堕としてみせる陵辱調教ものをご所望の御仁にはやや物足りなく感じられるかと推察されるもの、官能小説におけるキワモノをお求めの好事家にはまたとないご馳走といえるのではないでしょうか。かなり読者を選ぶ逸品ゆえ、取り扱いには注意しつつ、フツーの官能小説じゃない満足できない御仁には強力推薦したいと思います。