以前に感想をあげた『隣りの美少女 通学痴漢日記』の作者の一冊にして、これまた先の本に勝るとも劣らない傑作でありました。まさに官能小説とは男のメルヘンなり、という読者の妄想を体現した作風こそが作者の真骨頂、ここで「イマドキの女子高生にそんなの、ありえないでしょ」などといった野暮なツッコミはこの際御法度で、ここは作者の掌に載せられて思うがままこの現実世界では希有なる妄想メルヘンを堪能するのが吉でしょう。
あらすじですが、父親が外国の支社に駐在となった隣家の女子高生にロックオンしたリーマンの中年男が、彼女のせいで事故ったのをチャンスとばかりに無理難題を押しつけていき官能を花開かせていく、――という話。とにかくこのヒロインの造詣が素晴らしいッ!、と本作はその一言に尽きるわけですが、今年高校三年生になるのに自慰経験もなし。レズっ気アリアリの友人がいて彼女から色々とエッチな話を吹き込まれてはいるものの、今一歩踏み出す勇気がない、……そんな彼女の運転するバイクで怪我をしてしまった主人公のリーマン男が外堀を埋めていくかのように彼女を攻略しているプロセスが本作の見所でしょう。
個人的にツボだったのは、やはり自慰経験もない美少女をじらしにじらして、なかなか本番行為まで持っていかないそのプロットの巧みさで、まずは事故って体が動かせないからと彼女に溲瓶を持たせて排尿を手伝わせる、その挙げ句にナニを握らせしごかせる……。彼女もまたいやよいやよといいながら、自分の運転したバイクでこんな怪我をさせてしまったのだから、――という負い目があるゆえに逆らえない。そこへつけ込んで次々と要求をエスカレートさせていくわけですが、主人公の根は優しそうな(?)性格もあってか、それが決して脅迫へと傾くことなく、ゆっくりと時間をかけて彼女を淫蕩の世界へと導いていきます。
もちろんリーマンの主人公には妻もいて、しっかりと夜の営みもこなしてはいるため、欲求不満のネクラ男というわけではありません。それゆえ彼女に対する要求も陵辱のごとき陰鬱さは皆無ながら、隣の美少女の若々しい色香にすっかり舞い上がってしまった彼の欲望は尽きるところを知らず、最後の最後はついに本懐を遂げるのですが、とにかくそこにいたるまでの過程が非常に丁寧に描かれているところが好印象。そんな丁寧な筆致にありながら、クライマックスにおいてはじめての自慰からいきなり本番行為へと流れる緩急が秀逸で、これまた主人公と結ばれたあとのヒロインの変貌がいじらしい。淫蕩な女へと脱皮しながらも自分から彼の体を求めるような仕草は決して見せず、ちょっとだけ艶っぽい服装で彼を誘惑しつつ、そのことを指摘されると恥らしいながら体を開いてしまうという、――まさに男の妄想を具現化したかのような理想的なヒロイン像を堪能するだけでも本作を読む価値は十分にアリではないでしょうか。
『隣りの美少女 通学痴漢日記』もそうでしたが、とにかく官能描写の闇雲な数珠つなぎに溺れることなく、ヒロインが調教されていく過程にドラマを持たせた必然をしっかりと添えて展開を進めていく構成が素晴らしい作者の作品、このほかにもまだまだ未読のものが何冊かあるようなのでさらにチェックしてみたいと思います。
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隣りの美少女 通学痴漢日記 / 倉田 稼頭鬼