傑作。どストライクの官能小説というよりは、むしろ花房観音などが描き出す流麗な恋愛官能小説として堪能しました。「息子の先生をM調教」と帯にはあって、ソッチの読者を想定しているかのように見えるものの、調教というほど大袈裟なものではなく、むしろ恋愛感情をベースに、処女の女教師に少しずつセックスの手ほどきと悦楽を教えていく、――という内容ゆえ、陵辱調教そのほかハードな描写はナッシング。しかしながら恋愛小説としての魅力がそうした趣向を大きく上回っており、まさに極上の、上品な小説としての魅力を放つ一編へと仕上がっています。
物語は、息子持ちの男やもめが、妻の面影を感じさせる女教師に愛の告白を敢行。しかしながら女教師は男性経験のない処女で、彼は一度きりのセックスを約束に交わるのだが、――という話。実をいうと、タイトルにもある処女担任教師のほか、もう一人魅力的なヒロインが本作には用意されていて、それが隣近所の娘っ子。彼女は女教師の元教え子でもあり、また同時にカレシ持ちながら主人公の男やもめにも気があるらしく、冒頭からイキナリ口淫によって主人公をイカせてしまうと、そのあともそうした関係を続けていくのですが、一方主人公にしてみれば女教師との関係もある。中盤では娘っ子との関係が女教師にバレて一悶着あるのですが、そこからの和解が3Pへとなだれ込む動機付けになっている構成が秀逸です。
女教師の思いと、卒業をしたらもう主人公に会えないと嘆く娘っ子の思いが3Pの場で交錯し、三人の官能を濃密に描き出した後半は本当に素晴らしく、これだけでも本作は読む価値アリ。そして息子がいながらもあまり大きく舞台に出てこないところが巧みで、それがまた最終章で再び描かれる3Pの舞台装置へと活かされている趣向も心憎い。変態プレイはいっさいなく、せいぜいが口淫とレズくらいなのですが、そうした奇をてらった描写に溺れることなく、主人公とヒロイン二人の心の機微に深くわけいり、その思いを深い愛欲描写へと昇華させた作者の筆致はまさに「文学」。この作者の作品は始めてですが、花房観音が一般小説で許されるのであれば、本作の作者の作品も十分に一般小説の分野において他作家と互角にやりあえるほどの力量を備えているものと確信した次第です。
まさかまさかフランス書院でこれほどの文学的香気に溢れた逸品と出会えるとは思っていなかったので超吃驚。Kindle Unlimitedでなければまず手に取ることはなかったであろう一冊でしたが、官能小説の超マニアといった読者ならずとも手に取っていただきたい逸品といえるのではないでしょうか。オススメです。