先日読了した『隣の妻・隣の娘【力ずくの和姦】』の作者の一冊。どうやら相馬氏の作品のタイトルには「力ずく」のキーワードが定番となっているのか(スティーヴン・セガールの沈黙シリーズみたいなモン?)、今回も力ずくとありながら暴力行為に及ぶことはいっさいなく、静かな脅迫を用いてジリジリと女たちを堕としていく様がなかなかにスリリングな一冊でした。
物語は、上司の娘がワルたちとつるんでいるみたいだから偵察してくれ、との依頼を受けた主人公が娘っ子に探りを入れると、彼女はブルセラ娘だったことが判明。それをネタにすぐさまホテルへとチェック・インを済ませて彼女を堕とすと、今度はその毒牙を上司の妻に向けて、――という話。
タイトルにもある通り、上司の娘に妻のほか、そのノリで部下の妻にまで手を出してしまう主人公の豪腕ぶりがなんともナイスで、この成り上がりぶりがほんのちょっとだけ大藪春彦を彷彿とさせる、――というのは大袈裟でしょうか。ありふれたリーマン生活を送っていた人物がほんの少しのきっかけで悪に手を染め成り上がっていく様が痛快です。
官能描写自体は意外にノーマルなのですが、おおよその黒本であれば普通にこなしてしまう行為を三人のヒロインですませたあとの展開が素晴らしい。当然ながら3P、4Pといった多人数でのプレイへとステップアップをはかるわけですが、自らの上司を堕としながらもそのことを気取らせずに最高の背徳を体現してみせる主人公の悪辣さが光っています(この背徳の所業については是非とも実作に当たってみて頂きたく詳細は控えます)。もちろんこの背徳感ゆえ、本作の官能描写はこのプレイがクライマックスといってもよく、このあとは部下の妻を交えてまたもや多人数でのプレイに及ぶのですが、こちらはデザートといった感じで、やはりメインディッシュは上司を交えた「スワッピング」プレイに尽きるといってもいいでしょう。
最後は主人公が何か罠に嵌まってひどい目にあうのかな、という危惧もあったものの、『隣の妻・隣の娘【力ずくの和姦】』同様のハーレムで幕を閉じる本作は、リーマンが抱くささやかな成り上がりの夢をリアルにしたピカレスクロマンといった風格ゆえ、平凡なリーマン生活を送っている日常からひととき離れて悪の華を咲かせてみたい、なんて妄想で頭をムンムンさせている男衆にこそ読んでもらいたい一冊、といえるのではないでしょうか。
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隣の妻・隣の娘【力ずくの和姦】 / 相馬 哲生