『隣りの女子高生 通学痴漢白書』に『痴漢通学 隣りの女子高生』、そして『隣りの美少女 通学痴漢日記』と、とにかくハズレなしの傑作揃いともいえる作者の一冊。ジャケのデザインからして、上に挙げた三冊より古いんじゃないのかなァ、という気がするのですが、本作もまた痴漢をモチーフに据えた男の教養小説ともいえる傑作(ちょっと大袈裟(爆))で、堪能しました。
物語は、冴えないリーマンがある日、電車の中で痴漢されている痴女に遭遇。なんとその痴女を連れていた紳士は痴漢倶楽部の会員だった。主人公はこれをきっかけに倶楽部の会員たちから痴漢の様々な技を手ほどきされ、ついには高慢チキな営業先の美人女医へと闘いを挑む、――という話。
とにかく物語の構成が素晴らしい。あることをきっかけに痴漢の魅力へと覚醒し、そのマスターである師匠や彼の仲間たちから様々な痴漢の技を伝授される主人公という筋書きはもう、マンマ拳法漫画(『拳児』トカ)。そして一つの技を身につけると、それをすぐに次章で実践してみせるという構成によって物語がテンポ良く進む構成も言うことなし。
さらには主人公が倒すべき宿敵に、タイトルにもある美人女医を配した点も秀逸です。この女性は主人公が営業をかけている病院へ勤務する高飛車な女医という設定で、客と営業リーマンという相手に逆らえない絶対的主従関係によってかのヒロインを憎っき宿敵に据え、主人公が成長していくたびにいよいよ決戦の時期が近づいていくことを予感させる流れで読者を物語へとグイグイ引き込んでいきます。
そして主人公を支える痴漢倶楽部たちの面々も個性的。「甘えのタツ」「ゴメンのトシ」など一癖有りそうなニックネームや、「秘技パンスト破り」などの技名に、パンストやロングスカートの構造性的説明を交えてそのテクニックの仕掛けを明かしてみせるところなど、登場人物のキャラ立ちと、主人公の成長譚としての魅力だけでも十分に見所のある一冊に仕上がっています。
もちろん官能描写もそれはそれは見事なものなのですが、上に挙げたような小説としての考え抜かれたキャラ設定や展開・構成があまりに素晴らしいゆえに、そちらの方で大いに愉しんでしまったのはナイショながら、最後の決戦となる電車内でヒロインの女医をおとすべく奮戦する主人公と、それを裏方でしっかりと支えてみせる痴漢倶楽部の仲間たちの熱き闘い――。これは、燃えます(爆)。それに加えて、ヒロインの中に眠っていた淫らな女としての本性を彼女の内的独白も添えて描き出す官能シーンの見事さなど、まったく欠点の見当たらない完璧な構成で魅せてくれます。
以前に読了した三冊は、官能シーンを描き出すための舞台装置として機能していたに過ぎない痴漢が、本作では主人公の成長と覚醒に寄与しており、その点でも、前の三冊とはその作風を大いにことにする本作、とにかく血湧き肉躍る官能小説として、「痴漢ものに興味はないけど、格闘漫画や映画だったらガキんときにたくさん見たよ」なんていう中年紳士の方にこそ強くオススメしたい一冊といえます。上記三冊と同様、強力推薦ということで。
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