「『人妻と少年』ってタイトルの本、以前も取り上げてなかったかい?」……という疑問はごもっとも。しかしあちらは貴藤尚『人妻と少年 魔悦の肛姦契約』で、こちらは別の作者の『人妻と魔少年』で、サブタイトルが「魔惑の熟唇」。刊行が2005年の3月ですから、一昔前の一冊ということになります。もっとも内容の方もこれまたオールド感漂う怪作で、その点は『人妻と少年 魔悦の肛姦契約』と似たり寄ったり、――というか、ヒロインの激しい悶えっぷりと、どこか読者投稿作品を思わせる稚拙な味のある文体など大変に個性的な一冊でありました。
物語は、32歳にして大手商社の役員夫人という良いご身分の人妻が、高校の同窓会に参加するためにと降り立った故郷の駅で出逢った少年に一目惚れ。どうしてかは判らないのだけれども、少年のことを思うだけでムラムラしてしまった夫人は、宿泊先の旅館で先輩の人妻とレズ行為に及び、その流れで少年と甘い行為に溺れる夢がかない、――という話。
とにかく件の少年に出逢った瞬間、激しい一目惚れに陥ってアソコを濡らしまくってしまうという夫人の不可解に過ぎる「現象」からして完全にクエスチョンマーク(爆)。少年に何か特殊な能力があるわけでも、はたまた夫人が何かの策謀・陰謀によって催眠にかけられているわけでもなく、とにかくコーフンして濡れてしまい、少年のことを考えているだけでムラムラしてタマらなくなって……という自己中の展開を一切の疑問符もなく受け入れることができるかどうか。ここが本作を愉しめるかどうかの分水嶺になるような気がします。
そのあとは”プッシー”をはじめとした横文字の妄想表現が爆発するのですが、とにかく夫人がコーフンしてしまう背景が、上にも述べた通りいっさい明かされないまま、妄想しまくりで乱れるばかりというアシッド感溢れる構成が凄まじい。そして夫人が悶えながら口にする喘ぎ声や台詞回しも、これまた完全に常軌を逸しており、このあたりの読者投稿を彷彿とさせるアマチュア感は貴藤尚の『人妻と少年 魔悦の肛姦契約』にも通じます。――というわけで、貴藤尚『人妻と少年 魔悦の肛姦契約』と同様、このあたりの印象的な台詞回しと仰ぎ声、さらには擬音も含めてざーっとここに並べてみると、
「だめえーっ、そんな格好、恥ずかしすぎますーッ」「ああーッ、気持ちよすぎますーッ」「おしりの穴が、いっぱいになってるーッ」「はあうーッ!」「あッくうーッ、全部が気持ちいいーッ!」「くむうーッ、痺れるうーッ!」「もう一度、大きな声でッ!」「奥さんのおま×んこを、見たいですーッ!」「ひああーッ、感じるーッ!」「むあーッ、すごく気持ちいいーッ」「あーッ、びらびらなんて、言わないでーッ」「でも、ペロペロしてみますね」「むはああーッ!」「ひああーッ、体が変になっちゃうーッ」「はあッ、はああーッ、むうッ、ぬあああーッ」「ぬッくう、ああああーッ!」「むあーッ、口が熱いですーッ」「あーッ、出そうですーッ」「ひあああーッ」「ドピュピュッ!」「ピュクッ、ズピュッ!」「ん、むーん」「ふむ、んー」「むんッ!」「ツヌッ!」「クチュッ!」「あーッ、入りましたーッ」「ニュヌッ!」「ふむむーッ!」「くううーッ、中身がえぐられるーッ」「ツプッ、ヌニュ、ツヌーッ、クチュッ……」「むああーッ、たまらないーッ」「グニュ、ニュルーッ」「クチュ、ニュヌッ、ツプッ」「ズニュッ!」「あー、入ってきたあーッ」「むうッ、むうんッ」「おま×こが、飛んじゃうううーッ!」「ふむうッ」「待って、続きはあとで、ネ」「ジュパッ、チュプッ、チュッ……」「それは、あとでしましょ」「はあーい」「そうね、ふたりで思い切り楽しみましょ」「わあーッ、嬉しいなーッ」「」チャツッ、ヌプッ、クチュッ」「あっ、ひああッ、ああうーッ」「グニュッ、ヌニュッ、チュヌプッ」「むあッ、ああーッ」「ひああああーッ!」「チャプッ、チュピッ、ツチュッ」「ペロッ」「ふむうッ!」「むむううーッ」「ぷはあッ」「むぷぷうーッ」「ズク、ニュニューッ」「ひううーッ、熱いおち×ちんが、中まで来てるうーッ」「ひううッ!」「ピュクッ! ドピュッ、ズピュッ……」「ひあ、あーッ」「あッ、ああ、ひああーッ」「むう、むんッ」「ああーッ、焦れったいのに感じすぎるーッ」「ぬああーッ、もう、ダメえーッ」
ピュクッ、ズピュッ、ツプッ、ヌニュ、ツヌーッ、クチュッ、ジュパッ、チュプッ、チュッ、グニュッ、ヌニュッ、チュヌプッ……という激しい擬音は粘膜がこすれあうシーンをイメージするためではあるものの、それ以上にふくしま政美の劇画(『女犯坊』トカ)を思い出して妙な気持ちになってしまうのは自分だけでしょうか。繰り返しになりますが、夫人が少年に一目惚れした理由については不問のまま物語は最後まで突き進み、最後はお約束とばかりに複数人での交合で大団円をキメてくれます。しかしながらやはりフツーにコーフンできる官能小説とは言いがたく、少年と人妻という相当に期待できる人選でありながら、それなりの好事家でないと官能シーンに没入できないのではないかと危惧される妄想と超劇画チックな擬音の乱れ咲きなど、そのアシッド感溢れる作風は相当に個性的。貴藤尚『人妻と少年 魔悦の肛姦契約』などと並ぶ「あの時代」ならではの官能小説を堪能されたい方にのみオススメということで。
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人妻と少年 魔悦の肛姦契約 / 貴藤 尚