今回この感想を書くために久方ぶりに再読したのですが、物語展開のあまりの非情さに絶句してしまいました(爆)。作者の処女作『美少女メイド 完全調教室』がもっぱら一人のヒロインに焦点を当てて物語を展開していたのに比較すると、本作では姉妹に母親という三人の可憐な女性たちがワル男の毒牙にかかって堕ちていく過程がネチっこい筆致で描かれていきます。しかしながら調教の対象が三人に増えたことが、官能小説のインフレーションという隘路に陥ることなく、姉妹と母娘の情愛を巧みに利用して、ヒロインの凋落を哀切も交えた悲劇へと昇華させた作者の構成力は素晴らしいの一言。
物語の冒頭早々に、両親が事故に遭い父はご臨終、母親と妹はいまだ入院中という悲惨な状況が説明され、ワルの接近におののくヒロインの姉がある決断を迫られるのですが、これがヒドい(爆)。彼女は肉体改造を施されて妹の戸籍へと入れられ、高校を卒業して女子大生になる筈だった彼女は、高校からやり直すことになる。一方、入院中の妹は新たな戸籍を得て、高校生から新たに小学生へとやり直しをさせられるという、常人であれば考えもつかないような非情な責めが恐ろしい。
姉が妹を庇い、そして妹が姉を庇うという、その姉妹の情愛につけいり、真綿で首を絞めるように二人を堕としていく奸計に加えて、肉体改造を施したアンバランスな肢体に、排泄さえもままならないような体に堕とした挙げ句に、それをまた責めの要素へと加えていくという終わりのない悪魔主義――。本作では姉妹の情愛が陵辱の進展に大きく絡んでいるのですが、そのスパイスとして、ワルが昔から恋い焦がれていた母親をも自らの手中におさめてヒドい目に遭わせるという展開もサブストーリーとして用意されています。ただこちらはまだまだ控えめで、作者が母娘の情愛を物語の構図に打ち据えて悪魔劇の大伽藍を構築するのには傑作『美処女』の登場を待たなくてはなりません。
もちろん皆の前での強制排尿、強制脱糞など官能小説ならではの「お約束」ともいえるシーンは素晴らしい濃密さで描かれているのですが、個人的にはむしろそうしたシーンを際だたせるために用意された柚木ワールドならではの様々な設定――戸籍改竄、肉体改造、女子高生を小学生へとおとしてテストでも落第させるように仕向けるなどの精神的な恥辱の数々など――に感じられる作者の悪魔主義をこそ堪能したい一篇といえるのではないでしょうか。
そうしたサドを遙かに超越した悪魔主義は、処女作『美少女メイド 完全調教室』においてもすでに高度な達成が見られているのですが、本作では上にも述べた通り、姉妹や母娘といったヒロイン同士の「関係性」に重みを持たせて陵辱の曼荼羅のごときおぞましい絵図を明らかにしてみせたところが新機軸といえるでしょう。そしてこの趣向は、作を重ねるごとにさらなる純度を増して読むものを圧倒する凄みを得ていくのですが、……このあたりについてはまた次回に述べたいと思います。いずれにしろ、処女作の変態・偏執ぶりを愉しめた御仁であれば、本作もまた大満足のうちに最後の”大団円”までをも堪能できるのではないでしょうか。オススメです。