傑作。Kindle Unlimited読み放題ストアで人気タグがついているものはとりあえずスルーと言っていた舌の根も乾かぬうちに、本作を読了(爆)。続編であることは承知しながら読み始めたのですが、そのスピーディーな展開と舞台構成の旨さに一気読みしてしまいました。
あらすじは、前作『痴漢集団「狼」』で狼たちの餌食になったバレー部の娘っ子を救わんと、空手の心得もある探偵の叔母さんが立ち上がるも案の定、ミイラ取りがミイラになって、――という話。実はこの感想を書き始める前に『痴漢集団「狼」』も読了しているのですが、展開と構成では本作の方が上ではないかと。とにかくほとんど全編、電車での痴漢シーンという破天荒な構成が凄まじい。前作で痴漢集団の餌食となった娘(ちなみにこの娘っ子も、前作で友達を助け出そうとミイラ取りがミイラになったパターン)が、痴漢集団の男たちに電車の中でヒドいことをされるシーンからスタート。被害者でも加害者でもない、第三者の視点から見たこの悪業を一息に描いてみせることで、読者を物語へと一気に引き込んでいきます。
とにかくこの痴漢集団の猛者たちが悪い意味での精鋭揃いで、レスラー崩れの巨漢から、悪魔のようなマラの持ち主、一眼レフの使い手、さらにはのび太のような馬鹿面をしながら相手を油断させるという変技の持ち主など、一芸に秀でた(?)連中が揃いもそろって女を落とす技巧をも身につけているというから恐ろしい。そうした連中が電車を一両占拠して痴漢行為に及ぶわけですが、電車の駅から駅の間という時間制限が、物語の展開に緊張感をもたらしています。
中盤からは娘ッ子を救おうと立ち上がった探偵叔母さんが予想通り、ミイラ取りがミイラになってしまうのですが、ここでは器具を使い、媚薬を使って繰り返し繰り返し彼女を堕としながら、娘ッ子を人質にして駆け引きと勝負を仕掛けていく痴漢集団との攻防が見所でしょうか。そして彼女が痴漢集団の手によって完全なる敗北を喫したあと、娘っ子が嘯いてみせる絶望の台詞など、悪堕ちした女を使っての精神的な責めもしっかりと凝らしてあり、緩急というよりは、急、急、急の連打で突き進むスピーディーな展開が素晴らしい。
最後は娘っ子の母親まで登場させて、トンデモない淫靡な宴が大展開されるのですが、はっきりいって勧善懲悪のカの字もないほどにヒド過ぎる展開は、先日読了した『故郷の若未亡人vs.幼なじみの姉妹』のような田舎のスローライフでマッタリ、しっぽり、……みたいな「やさしい世界」を堪能した頭にはかなりキツかったことも正直に告白しておくべきでしょう(苦笑)。とにかく起承転結もスッ飛ばして一気呵成に突き進むだけの凄まじい展開で見せてくれる本作、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』もかくやといういうほどの血圧上昇と心拍数激上げの興奮を与えてくれるという点でも、まれに見る陵辱小説の傑作といえるのではないでしょうか。オススメです。
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